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オーバーハング部の通気層開口部が 外壁防火性能へ及ぼす影響の検証

実証実験 2018.12.19

オーバーハング部の通気層開口部が 外壁防火性能へ及ぼす影響の検証

防火上のグレーゾーンについて実証実験。

下階よりも上階がせり出したオーバーハング部の通気層開口部は、防火面における弱点にならないのか? 以前より一部で懸念されていた防火上のグレーゾーンについて、実際に防火試験を行い、当社製品を用いて納めた場合の安全性を検証してみました。

オーバーハング部など防火被覆の取り合い部分には、建築物内部への炎の侵入を有効に防止することが求められています。その一方で、壁体内通気工法の普及に伴い外壁下端に開口を設ける仕様が一般化し、この開口が防火被覆を途切れさせ、通気層に炎や熱が入る危険性を生んでいるのではとの指摘があります。ところが、この部分の防火性能を評価する方法は公示のものとはなっておらず、いわゆるグレーゾーンとなっています。

城東テクノのGAISOブランドでは、このようなグレーゾーンに関する検証に積極的に取り組み、より良い家づくりのための判断材料を増やすことも目指しております。そこで、木造の防耐火に詳しい桜設計集団代表の安井昇氏の監修の下、本部位に関する防火試験を行い、オーバーハング部の外壁の防火性能に問題が生じないかを検証しました。

 

オーバーハング部に居室を設けた例

 

通気層を設けたオーバーハング外壁の防火性能の確認試験

<実験の詳細>

通気層のない試験体を含む3種の試験体を製作(表1:すべて軒天勝ちの納まり)。各試験体を大型加熱炉に設置して外壁側から60分間過熱し、各部位の表面温度を計測しました。

 

 

<検証内容>

オーバーハング部の通気層開口部の形状によって、外壁の防火性能に問題が生じないか(室内の温度が急激に上昇してしまわないか)を検証しました。

<試験体について>

通気層のない試験体Aを1種類用意。通気層を設ける試験体の通気層下部に、GAISOのオーバーハングHF-A4560(穴なしタイプ)を用いたものを試験体B、HKF-2555(穴ありタイプ)を用いたものを試験体Cとし、2種類を用意しました。通気層上部には通気見切(スリムタイプ)を使用しました。

 

表1:試験体(3種)の仕様

 

 

 

<結果>

炉内温度(赤)、外装材裏面(黄)、内装材表面(緑)、内装材裏面(=室内温度、青)の温度変化を右のグラフに示します。試験体の仕様の違いは、線の種類(破線、実線、一点鎖線)で示します。赤丸で示した箇所から、以下を確認できました。

・45分経過時点の室内側の温度について、通気層の有無による差はほとんど見られませんでした。

・45分経過時点の室内側の温度は約60℃で、防耐火性能試験(初期温度+140℃)を大きく下回ることが分かりました。

<結論>

オーバーハング水切りと通気見切による外壁通気のための開口が、外壁の防耐火性能へ与える影響は小さいことがこの実験で分かりました。