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小屋裏換気トレンドvol.3「軒の出の長さ」

住宅事情 2019.05.18

小屋裏換気トレンドvol.3「軒の出の長さ」

この小屋裏換気トレンドでは、「フラット35住宅仕様実態調査報告」から小屋裏換気に関わるデータをピックアップし、ご紹介します。
第2回では「屋根形状」の動向について確認しました。今回は、「軒の出の長さ」について見ていきます。

 

軒の出の長さについて見る前に

第1回「小屋裏換気孔の設置方法」で見たとおり、小屋裏換気の取り方で最も多いのは軒裏吸排気でした。

 

 

その他の取り方も、壁吸排気以外は軒裏を吸気孔にする換気方法です。
つまり平成29年度では、59.7%の住宅の軒裏に換気孔が設置されていることになります。
これは屋根断熱・その他を除いた住宅の99.0%を占めることから、小屋裏換気を取る際はほとんどの場合軒裏に換気孔を設置していると言えるでしょう。

そこで、換気孔の選定にも関わる軒の出長さの傾向を、エリア別と屋根形状別で確認してみたいと思います。

 

エリア別でみると、軒の出の長さはどれぐらい?

「軒の出の長さ」という調査項目は、今回の調査から新たに追加されたため前回との比較はできません。
そこで、まずはエリア別の軒の出の長さについて見てみたいと思います。
調査票を見ると解答欄は自由記述になっていますが、調査報告書では20cmきざみで分けて割合が示されています。

 

 

全国的には、60cm以上80cm未満の軒の出が最も多く、次いで40cm以上60cm未満が多くなっています。この2つ(40cm以上80cm未満)で6割近くを占めます。

地域別に見ると、無落雪屋根の多い北海道は、軒の出40cm未満が8割を超えています。
首都圏は、60cm未満の軒の出が78.2%と、他地域に比べて軒の出が短い住宅が多い結果とりました。調査報告書によると、東京都・神奈川県では平均が30cm台と非常に短い結果となっていたそうです。これは、土地が狭く軒が出せない密集地が首都圏に多いためだと考えられます。
他のエリアは全国の傾向と同様、最も多いのが60cm以上80cm未満で、次に40cm以上60cm未満が多くなっています。
一方で、20cm未満や軒の出は無いという住宅も、全国各地に一定数建てられていることも分かります。

 

屋根形状別の軒の出の長さの傾向は?

屋根形状ごとの軒の出についても公開されています。
第2回「屋根形状の種類」で見た通り、現在最も多い屋根は40.7%の切妻屋根でした。
次に多いのが片流れ屋根で、この10年で急激に増加し30.5%を占めるまでに至りました。

 

 

これを踏まえて屋根形状ごとの軒の出の長さを見てみましょう。

 

 

全体の4割を占める切妻屋根の軒の出は、60cm以上80cm未満が44.4%、40cm以上60cm未満で27.0%となっています。
全体の3割を占める片流れ屋根は、軒の出の長さが短いものから長いものまでばらけています。切妻屋根と比較すると、相対的に軒の出が短い傾向にあると言えるでしょう。
軒の出が短いものとして、「20cm未満」と「軒の出は無い」を足した割合を見てみると、切妻屋根はわずか4.5%ですが、片流れ屋根は26.7%です。やはり片流れ屋根はあまり軒を出さない住宅が多いようです。

コラム「小屋裏換気トレンド」はこれで最終回となります。
小屋裏換気に関わるデータとして、換気の取り方、屋根形状、軒の出のトレンドを見ていくことで、エリアごとの違いやトレンドの変化を感じていただけたと思います。
長持ち住まいを建てるためにも、どのような屋根でどのように換気や通気を取るのか、改めて考えてみてはいかがでしょうか。

 

参考資料:住宅金融支援機構「フラット35住宅仕様実態調査報告」